優しく流れる音楽の河

- 2019/09/20 カンドーミュージック
『アンビエント』と言う言葉を時折耳にします。
直訳すれば『環境』と言う意味になりますが、地球規模、世界規模の大きな環境を指すのでは無く、
自分をとりまく環境、自分の周囲にあるもの、と言った身近な環境を意味します。
この言葉を、音楽と言う形で初めて表現したのは、
かつてロキシー・ミュージックと言うバンドのメンバーであり、その後はソロとして、
そしてプロデューサーとして、デヴィッド・ボウイやU2などの作品に関わったイギリスのアーティスト、
ブライアン・イーノです。
ブライアン・イーノ
イーノは1978年、『Ambient 1/Music for Airports』と言うアルバムを発表し、
アンビエント・ミュージックの先駆者となりました。
文字通り空港で聴くためのアルバムで、実際にこのアルバムはニューヨークのラガーディア空港内で使用されています。
イーノはこの後、Ambient4までアルバムをリリース。
『アンビエント・ミュージック』は世界の音楽ジャンルとして定着しました。
音楽は演奏者の前だけで聴くものではなく、
また室内のオーディオの前だけで聴くものでもないことを、彼は証明したのです。
さて、話は変わります。
先日、 国内を飛行機で移動する機会がありました。
何気なく聴いた機内オーディオプログラムで、私はその女性アーティストの声に出逢いました。
閉鎖された航空機の中、窓から見えるのは青い空と白い雲海のみ。
しかし、その光景の中に彼女の声は何の障害もなく、
溶け込んで行くのです。
私は、これこそアンビエント・ミュージックだと感じました。
優河【さよならの声】
アーティストは優河。曲は【さよならの声】。
浮遊感溢れるグルーヴに乗せているのは、透き通るようでいながらも、ただのウイスパーではない、
どこかに芯のある優河の歌声。その名前の通り、音楽の河を、
彼女の優しいヴォーカルが滔々と流れて行くのです。
この歌は時と場所を選びません。
誰もいない、真っ白な砂のビーチの上でも。
森の中の森林浴でも。
満天の星空の下でも。
渋谷のスクランブル交差点を、
イヤフォンの音量を最大にして、この曲を聴きながら歩いて見ました。
洪水のような人の流れの中でも、
優しい音楽の河は、シュールに溶け込んで行くのです。