海流のなかの吉田拓郎

- 2019/02/20 カンドーミュージック
節分が過ぎ、昼と夜の時間が逆転すると、いよいよ春の訪れを感じて、気分は明るくなります。
丸めていた背中を伸ばして、外に出かけようと言う気になる季節です。
吉田拓郎【春を待つ手紙】
何故か真冬よりも、春を意識しはじめたこの頃になると無性にこの曲を聴きたくなります。
1979年ですから、今から40年前のナンバーです。
あの太田裕美さんの大ヒット曲『木綿のハンカチーフ』と同様、
男性と女性の往復書簡形式で構成された吉田拓郎さんの【春を待つ手紙】は、拓郎さんの担当ディレクターだった男性と、
その奥様がやり取りされた、実際の手紙を基に創られた名曲です。

拓郎さんが長きに渡りJ-POP界のトップを走り続けられるのは、
『人生を語らず』、『人間なんて』、『流星』、『唇をかみしめて』などの男らしい骨太なナンバーの傍ら、
『外は白い雪の夜』、『カンパリソーダとフライドポテト』、そして本作などの繊細な愛の歌を紡ぐところにあると思います。
人間だから求めてしまうけど それこそ悲しみと知ってもいるけれど
約束なんて破られるから美しい
あなたはあくまで男でいて欲しい
私を捨ててもあなただけ捨てないで
待つ身の辛さがわかるから急ぎすぎ
気づいた時には月日だけ年をとり
何故かこの曲には惹きつけられる言葉がたくさん散りばめられています。
それは私の中にある日本人としてのアイデンティティに、拓郎さんのリアルな表現が響いているのでしょう。
言葉の大切さを実感出来る曲です。
私もまだまだ言葉を学ばなければいけない。
日本語の美しさを学びたい。この曲を聴くたびにそう感じるのです。
やがて拓郎さんが2人のドラマを締めくくります。
ここでも春を待つ人々に逢えるでしょう
泣きたい気持ちで冬を越えてきた人
アーネスト・ヘミングウェイ
言葉を学びたいと感じた時、必ず読み返す作家がいます。アメリカの作家、アーネスト・ヘミングウェイです。
シンプルな文体の中に煌めく言葉の世界は拓郎さんと繋がるものがあります。
私の中では言葉を紡ぎだす2人の師匠です。
春を感じ始めたこの時期、この曲を聴きながら、図書館もしくは書店に出かけましょう。
『海流のなかの島々』などはいかがですか?