胸に突き刺さるレモンの強烈な切なさ

- 2018/04/18 カンドーミュージック
レモンと言う果実は、見た目の明るさに反して、文学や歌の中では、とても切ない存在として描かれています。
レモン
レモンの産地は、イタリアのシチリア、アメリカはフロリダやカリフォルニアが有名です。
特にカリフォルニア産は.『サンキスト』と言うブランド名で日本でも定着しました。
太陽の光がよく似合う、明るいイメージです。
しかしこれが文学の世界になると、レモンは一気に切ない果実となります。
梶井基次郎さんの短編小説『檸檬』では、鬱屈した精神状態の主人公が、果物屋で買ったレモンを爆弾に見立て、
書店の本棚に置きます。そして主人公はレモンが爆発し、木っ端微塵になった書店を想像しながら街を行くのです。
檸檬、Lemon
歌の中でもレモンは切ない存在です。さだまさしさんが1978年にリリースした『檸檬』。
東京御茶ノ水を舞台に、男女の別れの情景のアイテムとしてレモンが登場します。
食べかけのレモンを聖橋から投げる歌詞で、恋人を棄てるシーンを表現しています。
そしてまた1曲、切ないレモンナンバーが現れました。
こちらも名曲です。米津玄師さんの【Lemon】。 本当に素晴らしい曲です。歌詞には深さを感じます。
梶井基次郎さんやさだまさしさんに通じる文学的深さです。
冒頭の『未だにあなたのことを夢に見る』と言う一節から、完結されなかった悲恋の物語を歌っていることが推察出来ます。
そして末尾に繰り返される『今でもあなたは私の光』。
その哀しい結びの言葉は、美しく流れるメロディによってリスナーのハートを直撃するのです。
この曲の中でもレモンは、『胸に残り離れない 苦いレモンの匂い』と切なく表現されています。
お聴きになるのなら、是非、オリジナルミュージックビデオをご覧下さい。こちらも深い。
ビデオの中で米津さん自身は教会の椅子に座っています。
アクティヴに動くのはもう1人の演者である女性ダンサー。
静の米津さん、動のダンサー。観ていて気付きました。
この曲は亡くなった女性を歌っているのではないか。
彼女に祈りを捧げる米津さん。踊りで哀しみを表現するダンサー。
これほどの曲が書ける米津玄師さんって、只者ではありません。